題名のない音楽会 2015年1月25日 動物の謝肉祭に詩をつけた
詩をつけたのは、何と!谷川俊太郎。
聞くと、児玉麻里・児玉桃姉妹のオファーによるものだそうである。
この姉妹のピアノに、管楽器と弦楽器は必要最小の人数で、しかし何れもエース級を揃えての演奏。そして詩の朗読は児童合唱団によるものだった。
企画意図は悪くないし、詩も中々のものだった。
元々私的な演奏会にかけられたものだから、管弦の編成はむしろ妥当だろう。
しかし、曲のかなりの部分を省略してしまったのはいただけない。全曲版があるなら、是非とも聞いてみたい。
全曲やらないと、終曲で、それまでに登場した動物が再登場する感じの面白さが伝わらない。
そして、この曲は決して子供向けの曲というわけではない、ということを、もっともっと強調しても良かったのではないだろうか。
とりわけ、今回省略された「化石」なんか、皮肉のオンパレードだ。自作の「死の舞踏」を下敷きに、誰でも聞いたことのあるメロディーが化石扱いされるわけだから。
http://tkdainashi.music.coocan.jp/saint_saens/fossiles.mp3
それと、「ピアニスト」だが、もっと下手に演奏すべきではなかったか。「できるだけ下手に演奏せよ」と作曲者が楽譜に記載しているのだ。
児玉姉妹だから下手に演奏することはできない・・・ということはないはずだ。実際、2005年のベルリン・フィルのヴァルトビューネでは、ラベック姉妹がそれをやって、大受けしていたのである。
それが耳に残っていたものだから、DTMでも試みたのがこれ。
http://tkdainashi.music.coocan.jp/saint_saens/pianistes.mp3
こうすることによって初めて、ピアノの練習に日々苦労している人間の哀しさ・おかしさが伝わろうというものだ。
全体を通じて、これは「冗談音楽の元祖」とでも言うべき作品なのであるというのが私の持論である。だからこそ、冗談がキツ過ぎるとして、生前には出版されなかったのだ。
一番分かりやすいのは今回も採りあげられた「亀」だろう。
原曲はこれで・・・少し長めに入力していますが・・・。
http://tkdainashi.music.coocan.jp/offeenbach/orphee%20aux%20enfers%20galop.mp3
「動物の謝肉祭」ではこうだ。
http://tkdainashi.music.coocan.jp/saint_saens/tortues.mp3
まあしかし、終曲の前にこんな曲が配置されているから、本質が見えにくいのかも知れない。「白鳥」だ。ピアノ2台とチェロ独奏。
しかし、何でこんな素晴らしいメロディーが浮かぶのだろう。
http://tkdainashi.music.coocan.jp/saint_saens/LeCygne.mp3
というわけで、企画は中々良いのだが、解説と演奏にいささか不満があるので、評点は4.
尚、この曲のことをもっと知るには、バーンスタインの演奏がベストだ。私も、これを何度か聴くうちに、この曲が「冗談音楽の元祖」であると思うようになったのである。