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2012年4月17日 (火)

名曲探偵アマデウス 2012年3月7日 熱情ソナタ 補足

これに関する記事は2012年4月15日にアップしているが、関連して4点ばかり補足しておきたい。

1.第2楽章の終りに使われた「属九の和音」について

どういうわけか、クラシック畑で使う用語とジャズやポップスで使う用語は、同じ意味を表わすのに異なる用語を使うことが多い。
和音の名称も然りだ。
「属九」の和音だが、この部分の和音の構成を見ると、コードネームで「C-9」となる。
ヘ短調の主和音はFm。属和音は(Fの5度上の音を基音とするから)C。その、より主和音に「解決」しやすい形は「属七」で、コードネームでC7。その上に3度高い音を積むと「属九」となる。コードネームでC9。
但し、この曲で使われているのは9度に当たる音が半音低いので「C-9」ということになる。この場合「属七短九の和音」とも言うようだ。第3楽章は、和音の構成音が1つ減るが、響きは同じである。

それにしても、ジャズ・ポピュラー畑でも、かなり複雑な和音づけをしたものでないと使わないはずのナインス・コード。ベートーヴェンが既に使っていたわけで、やはり凄いものだ。
尚、本件については、少し自信がなかったこともあり、次の参考書で確認した。

2.「動機労作」という用語について

浅学にして、こんな用語は知らなかった。少なくとも上記の辞典にはなかった。
音楽を専門に勉強している人は何とも思わないのかも知れないが、私にはどうにも違和感のある用語だった。

こうなれば原語にあたるしかないと思い、調べると thematische Arbeit だそうだ。thematischeは英語の「テーマの」であり、「主題の」としか訳せない。「動機」だと別の言葉になる。
Arbeit は日本語にもなっている「アルバイト」で、「仕事」である。結局、直訳では何ともならないと考え、意味かの訳を試みることとして

thematische は「動機の」で仕方ないだろう。Arbeit も「労作」というと「苦労した」という余計な意味がつけ加わるので、いっそ「技法」とか「手法」とした方が・・・と考え、「動機固執技法」とか、「動機主体技法」の方が、意味が通るのでは・・・あ、却って分かり辛いか。

話は少し脱線するが、よく使われてきているが、同様に、私が以前から違和感を覚えて仕方のない用語がある。「循環形式」である。
当初私は、これは「誤訳」ではないかと思っていた。だって、前の楽章の主題や動機が戻ってくるという形式なのだから。「回帰形式」とでも言う方が実態に即しているし、「循環形式」では意味が通じない。しかし、原語をあたると「サイクリック」という言葉を含んだ用語であって、「循環」と訳すしか仕方のないことが分かった。

3.ピアノソナタ第23番「熱情」と、交響曲第5番「運命」の作曲順など

ソナタの方は、作曲年が1804年~1805年。作品番号57。出版年について、下記の辞典には記載なし。
交響曲は、作曲1807年~1808年。出版年1808年。作品番号67。
ビアノソナタの次の作品(ピアノソナタ第24番)の作曲は1809年だから、第23番から確かに4年空いているし、作風も変化している。

一見すると、ピアノソナタで使った動機を、交響曲で大々的に使った(使い回しした)と見えるが(番組内でもそんなことに言及していたような記憶あり)、多分違うと私は思う。

ベートーヴェンは何曲も同時並行して作曲していたという話があり、殆ど同時にあの動機がアタマに浮かび、使い方を変えることによって全く異なる効果が挙がることに気付き、先にピアノソナタを完成させた、ということなのではないだろうか。

「熱情」も「運命」もベートーヴェン自身が付けた愛称ではない。しかし、残された作品群を前にして我々は、ピアノソナタに出てくる動機を「運命の動機」と呼んだりするわけである。

分かりやすくはあるが、ベートーヴェンとしては本意でなかったかも知れない。

4.ベートーヴェンとピアノ

当時、ピアノが格段に技術的な発展をして行く時期で、ピアノメーカーが、競ってベートーヴェンの処に自社のピアノを持ち込んだという話がある。多分、無償で提供したのであろう。
そして、この曲を作曲したときのエラール社のピアノは、高音域が拡大し、それまでのピアノより遙かにダイナミックな音が出せるようになった

作曲しながら・・・やや深刻な感じもする曲想ではあるが・・・ベートーヴェンは凄く嬉しかったのではないだろうか。

そして、最後のコーダの部分で、そのピアノの最高音を使うことにしたとき、「してやったり」とほくそ笑んだかも知れない。それは、エラール社に対するサービス精神もあったと思う。
エラール社だって、自社のピアノを使ってベートーヴェン氏がこんな素晴しい曲を作ってくれた、というのは恰好の販促になるからである。

また話が脱線するが、ベートーヴェン以降のビアノ作品を、当時の音を再現したいためとか称して、当時のものに近い楽器で・・・ピアノフォルテなどというものも含めて・・・演奏するのは、私は間違いだと思っている。

現在のピアノでこんな表現までできている、ということをもしベートーヴェンが知ったら、大いに喜ぶだろうし、「もっと生きていたかった」と悔しがるかも知れない。とにかく新しもの好きで、とくにピアノにはうるさかったはずの人なのだから。

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