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2012年2月17日 (金)

名曲探偵アマデウス 2012年2月8日(水) 五重奏曲 ます

駅弁づくりの3代目当主がクライアント。田舎の駅で細々とやってきたが、売り上げ拡大を目指し、東京で一旗揚げたいと考えている。試みに東京駅のデパ地下に出してみたら、サッパリ売れない。
そんなとき、亡くなった祖父が夢枕に立ち、この曲を聴いて修行をやり直せと言う。その曲が、シューベルトのピアノ五重奏曲「ます」というわけである。

「ます」(サカナの鱒)がテーマだから鱒ずしの弁当か・・・と思ったらそうう単純なものではなかった。しかしプロセスを書いても必要以上に冗長となるので、「謎(?)解き」の進行と、それに並行して進む楽曲分析の推移は省略する。
概ね次の点が説明された。

  • ピアノ五重奏の標準編成は、ピアノの他にヴァイオリン2挺とヴィオラ1挺、そしてチェロである。しかしこの曲はヴァイオリンを1挺として、コントラバス1挺を入れている。大変ユニークな編成である。
  • そうして、音楽の中で低音部をコントラバスに任せることにより、チェロは低音部を受け持たずに済み、メロディーを弾きに行ける。ピアノも同様。
  • 第4楽章の原曲は、シューベルトが以前に作曲した、歌曲「ます」である(このために、この五重奏曲も「ます」と名付けられた)。
  • しかし、原曲は変ニ長調だが、五重奏曲はニ長調。半音上げているだけだが、ニ長調は弦楽器、とくにヴァイオリンがよく鳴る調である。この一工夫によって演奏効果を上げている。
  • 「ます」の主題は親しみやすい。それは、その主題が主和音の構成音(ド、ミ、ソ)でできていることと、続きを含めても1オクターブ内に収まっていることにも起因している。
  • 主題と5つの変奏、そして最後に再度主題が出るという構成になっているが、変奏ごとに主役たる楽器を変えている。とくに最後の第5変奏はチェロが主役であり、アマチュアチェロ奏者である友人に「華」を持たせたのではないか。
  • 最後の主題回帰では、ヴァイオリンを歌手と見立てたかのように、ピアノが歌曲「ます」と同じ伴奏型を採る。

まあ「ます」の楽曲分析と言っても、どうしても第4楽章を中心としたものになるのは、時間の関係もあって仕方のない処か。
それに、私は思うのだが、やはりこの第4楽章がなかったら、この曲の魅力は半減するだろう。

全ての楽章が魅力的だし価値も高いと思うが、第3楽章まで聴き進めてきたあとに、第4楽章でこれが鳴り出したときの幸福感たるや、中々比べるものはない。ここには主題から第1変奏までを入れているのだが、ピアノが登場するのは第1変奏からで、ここで更に視界が開ける感じがする。

http://tkdainashi.music.coocan.jp/schubert/klavierquintettOp114_4thMvt_opening.mp3

さて、番組の内容について一言だめ出し。
歌曲の「ます」は、こんな曲・・・と言って少しだけ鳴らしていたが、よりによって日本語で歌ったものを使った。今どきこんなことをやっていてはいけない。ちゃんとドイツ語で歌っている映像、NHKなら売るほど(!?)保有しているだろうに。

次に曲そのものについてだが、この曲を、楽しく明るい曲・・・と番組内でも言っていたし手許の総譜の解説にもそう書いてあるのだが本当にそうだろうか、と少し疑っている。

というのも、歌曲の「ます」には、ピアノ五重奏曲の「ます」で使われている明るい(と言われている)メロディーの次に、釣られてしまった「ます」が嘆いている歌詞のついた部分が出てくるのである。

後者はピアノ五重奏曲では登場しない。登場しないから分かりづらいのは確かだが、五重奏曲を作曲した当時、既に歌曲の「ます」は幅広く知られていたはずだし、だからこそこの曲を五重奏曲に入れて、上記の、アマチュアのチェリストも交えた親しい友人たちで・・・ピアノはシューベルトが弾いて・・・楽しんだのであるはずだ。
サカナの「ます」にやつして無常観みたいなものを歌っている、歌曲の「ます」と二重写しとなって、友人たちとの楽しい一時が、一期一会のものであり、もう二度とは戻ってこないかも知れない時間だ・・・という気持も表わしている、と考えても不思議はないと思うのだが・・・。
それともこれって、どうしてもウラを読みながら聴いてしまう、マーラーの聴きすぎだろうか。

ことの当否はともかく、私は、mp3ファイルをリンクさせた辺りでは「幸福感」とか「視野がさらに開く」などと書きはしたが、演奏によっては涙が溢れてくることだってあるのだ。
いや、マーラーの曲で、ある場合にに感じる哀しさとは異なるのであって、日本語の古語で、「かなし」は「いとおしい」という意味も含むが、ちょうどそんな感じなのである。

さて、番組内での演奏例は小山実稚恵とN響のメンバーによるもので、第4楽章のみ。それなりに良かった。

私はこの曲、しょっちゅう聴くわけではないので、余り比べることができるほどにはCDも持っていない。このため、名盤とされていて私も持っている盤を1つだけ挙げておく。ただ、新品の入手は困難かも知れない。

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