N響アワー 2012年1月8日 シベリウスV協 フィンランディア
「永遠の名曲たち」のシリーズの一環として、シベリウスのV協が取り上げられた。
ヴァイオリンは竹澤恭子。指揮はブロムシュテット。
ヴァイオリンはともかく、指揮者の名前を見て、なるべく先入観なしに聴こうと努めたが、結果はやはり・・・。
私はブロムシュテットという指揮者は2流だと、既に断じているし、今回も、やはりその域を出ない演奏だった。
全体として遅めのテンポだったのは、少し違和感があったがマア良しとしよう。問題なのは、シベリウスのこの曲に期待したい「熱気」のようなものが全く感じられない演奏だったのである。そのくせ西村は絶賛していて、作曲当時のシベリウスの音楽のエッセンスが詰め込まれた曲、といった解説をしていた。
であれば、こんな演奏はないだろうと思い、作曲年を調べると、
- このV協の作曲年は1903年で初演が1904年。初演の不評もあって1904年に改訂。改訂初演は1905年。
- 交響曲第1番の作曲は1899年で、初演も1899年。
- 交響曲第2番の作曲は1902年で、初演も1902年。
- 交響曲第3番の作曲は1904年~1907年で、初演は1907年
だから、交響曲第2番と第3番の間の時期にV協が書かれて初演されたことになる。
交響曲第3番はともかくとして、第1番も第2番も、シベリウスの初期作品の、地の底から湧きあがるような、熱い熱いエネルギーを感じさせる曲であり、その作風はV協も共通するはずだ。それが全く感じられない演奏というのは、もはやシベリウスの演奏とは認めたくない。
現に、番組内では、「熱さ」を祖国愛の発露とみなすという話の流れで、2曲目として「フィンランディア」を取り上げたのである。
そして、これが中々良かったのだ。
これはムストネン指揮による、2009年5月9日に行われたもので、N響アワーでは2009年6月7日に放送された内容である。このときに書いたはずのブログが見当たらないので(だから、リンクは付けないが)記憶をたよりに書くが、同じ日に演奏された、「ベートーヴェンのV協のピアノ版」というのが中々面白かった、という主旨の方を重点に置いた記事で、「フィンランディア」についてはとくに言及しなかったはずだ。
しかし、今回改めて聴いてみると、年末のカウントダウンコンサートにおける金聖響の駄演がまだ耳に残っていることもあり、「凄い」とつぶやかざるを得ない演奏だったのである。そう。シベリウスは、こうでなくちゃ。
というわけで、番組のタイトルであるV協は失敗だったと考えるが、良いフィンランディアが聴けたという点では収穫があった回だった。
尚、V協を始める前に、日本音楽コンクール2011年Vn部門の優勝者であると云う、藤江扶紀なるヴァイオリニストを呼び、チャイコフスキー、メンデルスゾーン、ベートーヴェン、パガニーニ(1番)とシベリウスのヴァイオリン協奏曲のアタマをピアノ伴奏で鳴らし、西村がそれぞれの作曲家の作品の特徴を説明して見せたのは中々面白かった。このコンクールの優勝者というのがどれだけのレパートリーを持っているものなのか知らないが、何れの曲も、冒頭だけとは云え、それなりに弾いて見せる、ということが、私にとっては驚きだったし、未来の才能を見た思いがした。
また、メロディーの作り方について西村が、シベリウスは「ヴァイオリン的な作曲家」だと称したのも、参考となった。
シベリウスは本来ヴァイオリニスト志望だったが、極度の「上がり症」だったので諦めて、作曲家になったのだそうだ。
上がり症だということで演奏家の道を断念する人は結構存在するのかと思うが、その結果として作曲家になり、世界的な名声を勝ち取ってしまう、その才能はやはり物すごいものだ。
シベリウスのV協、私のリファレンスはチョン・キョンファの演奏である。視聴できるようだから視聴をお勧めするが、この演奏、何かの機会に最初の部分を聴いてぶっ飛んだのであった。第1楽章の熱気もさることながら、第3楽章のワクワク感はどうだ。
こうしたこと、今回のN響アワーでは、全てが欠けていたのである。
チャイコフスキーのV協とのカップリングであり、チャイコフスキーも中々良い。
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