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2012年1月26日 (木)

名曲探偵アマデウス 2011年12月21日 さすらい人幻想曲

「ひとり息子が、家を出たきり帰ってこない。最近よく聴いていた曲に何かヒントがあるのではないか」と言う母親がクライアント。「何か、ダンダダ、ダンダタ、というリズムの曲です」ということから、その曲がシューベルトの「さすらい人幻想曲」ではないか、ということで「謎?」の解明が始まる。

曲の分析と並行して進められる謎解き(?)の推移は省略する。
曲の分析のみ、主要な点を以下に書く。

第1楽章 相談にもあった、「ダンダダ」という行進曲風のリズムが支配的で、それが表情を変えながら進む。途中でイ短調から変ホ長調という、当時は余り使われない調に転調し、光がパッと差してくるような雰囲気になる。これは遠隔転調と称するもので、演奏を担当した小山実稚恵によると、旅の途中での驚きを表しているような感じがする由。
ここで、遠隔転調がない場合と、遠隔転調がある場合を試しに弾いてくれたのは面白かった。

楽章の切れ目は、通常「終止線」(左が細く、右が太いタテ線=曲の終りを示す線。楽章の終りの部分に使う)ではなく、「複縦線」(右も左も細い二重のタテ線=音楽の途中、調が変るなどの切れ目で使う)が使われている。続けて演奏せよ、と言うこと。
(私がよく分からなかったのは、楽章の間を休むことなく続けて演奏するときには、atacca=アタッカ という指示が書いてあるのが通常なのだが・・・という点。本当はこの曲、『幻想曲』というくらいだから、『楽章』と呼ぶべきではない、ということか?この点の説明はなかった)

第2楽章 以前にシューベルトが作曲した、歌曲「さすらい人」のメロディーが使われている(このため、この曲全体を「さすらい人幻想曲と称する)。歌曲の内容は、決別の歌。ここで、モトの歌曲を少しだけ聴かせてくれた。

最終楽章(第4楽章)の終りから9小節目に至り、曲中唯一のfffが登場し、曲のアタマと同じフレーズが、主調であるハ長調で戻ってくる。さすらったあと、ここに再び戻る、ということか。

曲全体を通じて、心情を表すものとなっていて、後のシューマンやリストの曲の作り方につながって行くものである。

といった内容だったが、私に言わせれば、この曲に限らず、シューベルトという作曲家の作風全体が、シューマンやリストに繋がって行くと言うべきだ。ベートーヴェンの後半生の作風とシューベルトを合せて「初期ロマン派」と称する見方もあり、シューマンやリストなど「中期ロマン派」につながって行くことになる。
もっと言うと、以前作った歌曲を、後にもっと規模の大きい曲にも使うという・・・そこでは、歌曲で歌われていた歌詞の世界が、どうしても背後に見え隠れする。または、大きな規模の曲で表現している世界と、歌曲の歌詞の世界が二重写しとなる・・・作り方は、後期ロマン派であるマーラーにさえ繋がるものだ。

私は、多くの人がそうだと思うのだが、シューベルトというと歌曲、ということで、名盤と称されてきた幾つかの歌曲集をしばらくの間、何度か聴いていたことがある。
しかし、どうしても分からなかった。

しかし、ピアノ曲にこそ彼の真髄が込められているのではないか、と思うようになって、ようやくシューベルトという作曲家に少し近づけた気がしたものである。それは、何人かのピアニストで何度も聴いてきたはずの「即興曲」を、内田光子のピアノで聴いてからだ。

この中の作品90の第4番など、子どものピアノ教室発表会などでもよく採り上げられるほどで、演奏テクニックはさほど高くなくても弾けるはずだ。それもあって私は余り重要視していなかったのだが、内田光子にかかると、寂しさと恐怖を覚え、深淵なる世界に引き込まれる感じがしたのである。また、作品90の第1番。この、何と言うことのない曲だが、進むにつれて途轍もない寂しさに被われる・・・という思いを初めて味わった。

「さすらい人幻想曲」の話に戻るが、私はこの曲、まだ十分には分かっていない。
しかし、第2楽章の、「さすらい人」の歌曲による楽章だけでも聴く価値があると考えている。モトの歌曲よりも、ずっと素晴しい。ずっと凄い。
カチッとした演奏ということではポリーニなんだろうが、今回の出演に敬意を表し、小山実稚恵も挙げておく。
本当は内田光子の盤があればよいのだが(出ているはずなのだが)見つからない・・・。

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