名曲探偵アマデウス 2011年10月1日 展覧会の絵
ムソルグスキー作曲、ラヴェル編曲版による解説が行われた。
クライアントは、自分で店も持つファッションデザイナー。
店の経営が苦しくなり、祖母に援助を求めたら、古いLPが送られてきた。これを売って足しにせよという意味かと思って、売りにきたと言う。
しかし探偵は、このレコードに収録されている「展覧会の絵」に、祖母からのメッセージが隠されていると推理し、曲の解析にかかる。
曲の推移とともに各々の曲の音楽的な特徴や、隠されているかも知れないメッセージを順に説明・推理して行く方法が採られた。ここでは楽曲分析を中心に記載して行く。
曲は、友人だった画家ガルトマンの死に際し、彼の作品の展覧会が催され、それを見にいったムソルグスキーが、400点以上の作品の中から10点を選び、その印象を音楽にしたもの。
曲の間ごとに「プムムナード」という曲が入っていて、1つの絵をみたあと、次の絵に向かって歩いて行く様子を描く。
こうしたものでつないで音楽を構成して行くこと自体、既に西洋音楽の枠を越えて革命的と言ってよい曲づくりである。
冒頭のプロムナード
1小節ごとに5拍子と6拍子が交代する。ヨナ抜き音階で親しみやすい反面、和声の付け方は西洋音楽の理論から逸脱したものである。
ロシアの民謡などで使われる音楽を模していて、これは、ロシアの民衆の側に立つ、という、作曲者の思いを表している、と説明していた。
民衆の、日々の暮しの楽しさを表すのが「リモージュの市場」、苦しさを表すのが「ビドロ」と説明されて行く。
サミュエル・ゴールドベルクとシュミイレ(金持ちのユダヤ人と貧乏なユダヤ人)
ピッコロトランペットと言う珍しい楽器にミュートを付けて演奏するよう指示されている。番組内で、楽器の現物と、ミュートを付けたときと外したときの音色を比べて聴かせてくれた。
キエフの大門
華麗な終曲に付いたタイトルだが、モトになった絵はよくCDなどのジャケットに採り入れられている、ロシア正教の教会風の建物のデザインである。
しかし、作曲された当時、この門は存在していなかった。老朽化によって取り壊され、新しく建て直すにあたってデザインを募集していて、ガルトマンがそれに応募したときの絵であると推定されている。
古い伝統にのっとった中に新しい要素も盛り込んだデザインである。完成の暁には、ここに人々が集まって、感謝の祈りを捧げたい、というメッセージを示しているのではないか、と説明していた。
「展覧会の絵」は、作曲者の生前は殆ど評価されなかったが、色々な作曲家によってオーケストレーションが試みられ、ラヴェルの編曲版が最も成功し、最も有名になった。
ここで、この冒頭部について、ストコフスキー編曲版とラヴェル編曲版を聴き比べさせてくれた。
上記の通り、色々と説明していたが、ひょっとすると深読みし過ぎではないか、というのが私の感想だ。この番組、ときどき推論を暴走させてしまい、どこまでが音楽史としての定説なのか、音楽理論上正しいのか、分からなくなってしまうことがある。
また、ラヴェル編曲版が余りにも精緻にできていて親しみやすさも大きくしているので演奏機会も多いが、私はある時点からは、原曲のピアノ独奏による版の方が遙かに価値の高いものだと考えるようになっている。このことは、このブログ内でも以前触れたことがある。
最近はピアノ版での演奏も増えたようだ。以前の記事でも書いたが、我らが辻井伸行の演奏も悪くないが、やはりアシュケナージの若い頃の演奏にトドメを指すと思う。
両方挙げておく。
アシュケナージ盤のジャケットに使われているのが、「キエフの大門」のモトとなったと推定されている絵である。
これも以前に書いたが、このCDの演奏などを聴くにつれ、アシュケナージは、間違いなく20世紀を代表する超一流のピアニストだったという感慨にふけってしまう。
指揮者としての彼はそこまでは達していない。一流かも知れないが「超」までは付かない。演奏によっては1.5流だったりハッキリ二流だったりする。
番組は、祖母からのメッセージが、祖母が代々営んでいるツムキ゛職人であることから、古い伝統を大切に踏まえた上で、新しいことにチャレンジすべし、ということだと言うことになり、演奏例のあと、心機一転してクライアントが新作のファッションショーを開く、ということで終る。
演奏例はデュトア指揮。
こうした曲を振らせると、現在、彼の右に出る指揮者はいないだろう。
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