名曲探偵アマデウス 2011年8月10日 ドボコン
チェロの貴公子として世界的に有名なチェリストの、日本におけるマネージャーの相談。日本公演を間近に控えた日、突然彼が行方をくらませてしまい、連絡が取れないと言う。演奏予定の曲はドヴォルザークのチェロ協奏曲。通称「ドボコン」。
追っかけファンから「押しかけマネージャー」となったマネージャーの女性は、この曲が原因で彼が失踪したと思い、探偵に分析を依頼する。
曰く、曲の開始早々、チェロが出るまでが長い。いつまで経ってもチェロが出ない、チェロのコンチェルトなのに、他の楽器のソロが多く出過ぎ。
この辺りは、この曲の魅力そのものであることを探偵や、サンティの解説で説明されるが、チェリストの彼が置き手紙で「一人にさせて」と書いていたことから、これがドヴォルザークの書いた歌曲の題名である、と話が発展してゆく。
私は、この歌曲の話は初めて聞いた。
この曲を好んで歌った人はドヴォルザークの初恋の女性で、結局彼は振られたあげく彼女の妹と結婚するので義理の姉となってしまうが、その後も交流が続いた由。
そして彼がニューヨークに赴任しているとき、彼女が重い病に倒れ、危篤だという報に接する。彼女の回復を祈って、作曲中だったチェロ協奏曲の第2楽章に、その「一人にさせて」のメロディーを使ったのだそうである。
さらに、作曲が終ったあと、彼女の訃報に接し、第3楽章の終りを書き換え、第2楽章のテーマを回想しつつ、哀しみに満ちた静かな部分を付け加えたのだそうだ。
「事件」としては、その置き手紙に隠し文字として示されていたのが、チェコの街で、ドヴォルザークの墓のある処だ、ということから、作曲家の墓前に、演奏会を行うことの報告と、成功を祈念しに行ったのだろう、ということで「解決」。
曲の後のエピソードでは、そのチェリストとマネージャーが「年の差婚」(女性が遙かに年上のケース)をした、というオチが紹介されて終る。
さて、この日の放送、見るのに余り乗り気ではなかった。事前の予告で、演奏者が堤剛だったからである。
堤剛の演奏については、2011年1月21日付の記事「N響第1683回定期 堤剛は過去の人」に書いた通り、全く評価できない、いや、聴いていてイライラする演奏だからだ。その記事のあとN響アワーでも採り上げたので聴き直してみたが、私の判断が変ることはなかった。
しかし、オケに背を向けて演奏するというチェロ協奏曲ならではの難しさ・・・オケ側もソリストも、お互いのボウイング(弓使い)が見えないので合せるのが難しく、お互いを信頼し合わないとダメ・・・といったことや、オケのパートごとのソロが出てくるときは、チェロのソロが時には伴奏役となって、余り出すぎないように心がける必要かある、といったことを言っていたのは、収穫であった。
演奏者としては過去の人だと思うが、教育者としては優れたものをもっているのだろうと推察するに十分であった。
ドヴォルザークが初恋の人の死を悼んで付け加えた箇所は64小節に及ぶそうで、この部分を付け加えたことについて初演のときのソリストが大反対したので揉めたそうだが、実はここのチェロのソロとオケのコンサートマスターによるヴァイオリンソロの部分こそ、この曲で最も心を打つ部分のひとつであること、など、言われ、聴かされてみたらナルホドというものであった。
聴き慣れている曲でも、色々と説明されると新しい発見につながるものである。この番組の優れている点だ。
さて、私はこの曲のCD、1枚だけしか持っていない。
ただ、それは不朽の名盤とされているものであり、まだ聴いたことのない人は、まずこれを聴くことを奨めたい。
カラヤン指揮のベルリンフィルと、ロストロポーヴィチによる演奏である。
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