2010年3月5日の記事で、辻井伸行による「展覧会の絵」を紹介した。良い演奏だが、若干の物足りなさを感じる旨を書いた。
で、買ったまま放置していた「ラフマニノフ ピアノ協奏曲2番」を取り出して聴いてみた。
佐渡裕指揮 ベルリンドイツ交響楽団との共演。
これはかなり良い。オケの音色にもよるのだろうが、冒頭の部分、弦の響きが、これほど低く、暗く演奏されている例は余りない。そこにピアノが良いバランスで入ってくる。
そう、この曲はこう書かれているのだ。この曲を見直すことのできる演奏だと言える。CDの出来としては、「展覧会の絵」よりも優れていると思う。
しかし、どっちかと言うとオケの方が勝った響きであり、「普通に良い演奏」と言う以上のものではないし、以下でもない。
実の処、私は、ラフマニノフの協奏曲では2番よりも3番の方が好きだし、協奏曲と名付けられてはいないが、「パガニーニの主題による狂詩曲」の方がもっと好きだ。
もちろん私も、聴き始めたのは2番からで、色々な演奏を聴いてきたが、ある意味、聴き飽きたのだ。
そう感じ始めていたとき、「3番」をアルゲリッチが演奏した極めつけに凄いものが出て、「3番」をよく聴くようになったのである。いや、「3番」は、アルゲリッチでないと聴く気がしない。
今は信じられないほど安価で入手できるようだ。
まだ聴いたことがない方、是非とも聴いてみて欲しい。
第3楽章のテンポの速さったらない。そして最終部に向けての盛り上がり。
これに近いテンポで弾いた例としてはラン・ランがいる。しかし「凄味」という点で、アルゲリッチの比ではない。
辻井伸行の「2番」は、クライヴァーン・コンテテストで優勝した直後に、話題性ということもあり入手していたのだが、放置していたのは上記の事情による。
いや、実は、「2番」を再発見させてくれた演奏には、もう少し前に接していた。だから、余り期待しないでおこうと思ったりもして、聴かなかったのだとも言える。
エレーヌ・グリモーによる演奏である。
アシュケナージ指揮フィルハーモニア管弦楽団との共演。
クルマで移動中、ラジオで流れていたのだが、第1楽章の途中や、第2楽章の途中、何ともないようなメロディーで、泣けてしまったのだ。この曲がこのように鳴らされるのは初めてだった。
で、早速手元にCDを取り寄せたのだが、これも同様、「2番は飽きた」モードで、放置していた。
辻井の演奏を聴いたので、グリモーの演奏もちゃんと聴いてみよう、ということで、改めて全曲を聴いて確認した。
やはり、この方が数段良い。ラジオで聴いて泣けた部分と思われる箇所で、同様に泣けてきた。
全体の音の響きは辻井盤の方が優れているのだが、ピアノとオケの音量バランスはグリモー盤の方がより適切だ。飽きた曲なので今後何度も聴くことはないだろうが、聴くとしたら、迷わずグリモー盤を手に取るだろう。
それよりも、この「2番」が使われた映画のDVDを、何れの日にかは手に入れたいと思っている。DVDでなくとも、テレビで放送されることがあれば、何とか見たい。「七年目の浮気」は見たことがあるので、「逢びき」だけで良い。
この曲は、まず「逢びき」に使われ、それをパロディーとして使う形で、「七年目の浮気」に使われた。
後者が、マリリン・モンロー主演で、地下鉄の排気口の上でモンローのスカートがめくれ上がる有名なシーンのおかげで、この方が有名になってしまったのだ。これはテレビで放送されたことがあり、ちょうど見ていた。