N響アワー 2011年2月6日 マンフレッド交響曲
今回のテーマは「番号のない交響曲」ということで、チャイコフスキーの「マンフレッド交響曲」が採り上げられた。時間の関係で、演奏されたのは第1楽章と第4楽章である。
私は、この曲は余りジックリ聞いたことがない。LPを少しずつ集めていた頃、2枚組のものを買うのはかなりの決断を要し、その決断はマーラーを順に買ってゆくことに繋がっていて、他の曲には中々手を出せなかったためかも知れない。「マンフレッド」は1時間を超えるので、2枚組となっていたと推察されるからである。
曲は、まだ良く分からないというのが正直な処である。それなりに魅力ある旋律も出てくるが、チャイコフスキーのメロディーとしては最高のものではないと思うし、全体にゴチャゴチャしていて整理されていない感じがする。
それでも、曲の最終部でオルガンがガーンと鳴るあたりは実に崇高な雰囲気を出していて見事と言うしかないし、ゴチャゴチャしているという印象も、聴き慣れてくれば何となく全体が見えてくるのかも知れない。
番組の最後の「カプリッチョ」で、西村朗が、歴代の作曲家を「交響曲派」と「交響詩派」に分けてマッピングしたものを紹介していた。これは面白い観点だと思った。
もちろん、チャイコフスキーは「交響曲派」としていた。そして、「交響詩派」には、リストやR・シュトラウスが入っていた。
正確には、R・シュトラウスは交響曲を2曲書いているし、その理由を私なりに考えてみたことがある(「題名のない音楽館」の「作品論」の「R・シュトラウスの2つの交響曲」)。
私の考え方が正しいとすれば、R・シュトラウスは、「交響曲」と題する曲が出来るタイミングを待っていたのであって、それは「交響曲」というジャンルに対する畏敬の念から来ている。だから「交響詩派」として括ってしまうのは必ずしも正しくはないと考える。
しかし、間違いなく「交響曲派」だと思うチャイコフスキーが、なぜ番号なしの曲を作ったのかがよく分からない。番組内でもそのことの説明はなかった。
タイトルをつけるのを嫌ったというわけでもないはずだ。
初期の第2番「ウクライナ」と第3番「ポーランド」は後でつけられたようだが、第1番「冬の日の幻想」はあとでつけられたとはされていないはずだし、何よりも、第6番「悲愴」は自分でつけている。
と、ここまで書いて念のため例によって手元の辞典を調べてみると、第6番の「悲愴」は、弟が提案し本人も承諾したとされるが、出版社宛の手紙には、「愛称はつけないこと」と指示されていたそうである。ただ、曲が完成した直後に作曲者が死んでしまい、曲自体も陰々滅々たる雰囲気で終るという異常な構成もあって、出版時に「悲愴」と名付けられたとのことである。
この説が正しいのだとすれば、「第4番」「第5番」で徐々に自信をつけつつあったチャイコフスキーが、「マンフレッド」は、番号をつけるに値しないと考えたのかも知れない。「マンフレッド」は「4番」と「5番」の間に作曲されているのである。そして、番号をつけるのに値する曲が出来たと思った時点で、現在「第5番」として残されている曲に「第5番」とつけたのかも知れない。
さて、この日は、時間が少し余ったから、ということで、ラヴェルの「クープランの墓」から2曲が演奏された。
西村朗によると、ピアノによる原曲がそもそも素晴しいのに、ラヴェル自身がオーケストラに編曲したこの版は、オーケストラの鳴らし方、オーケストレーションのやり方の、最高の教科書なのだそうである。
私が「クープランの墓」をたまにではあるが聴くようになったのは、ごく最近のことである。
しかし、岩槻アナが西村朗の解説に対し、「私はオーケトラ版しか知らないが、これがピアノだと、どんなになっているのでしょう」と受けていたのには驚いた。こんな曲も聴いているんだ、と思った。
こんな曲・・・何かずっと浮遊し続ける感じで、音楽がどっちに行くのか分からず、最初は極めて退屈な曲と感じるはずだから・・・を聴いているというのは、かなりクラシックを広範囲に聴いていると思えるのだ。
この2人のコンビによる司会は、絶妙な組み合わせである。奇蹟に近いと言ってよいだろう。それは、別の日に書いたことだが、過去のN響アワーのVTRテープを、DVDに焼くという作業をしているので、歴代の司会者のこともよく思い出すことができるからである。歴代の司会者と比べても、圧倒的に素晴しい組み合わせだ。
尚、「N響アワー」も「題名のない音楽会」も、一時、とうしようもない低迷期があった。この2つの番組が共に蘇ったときの喜びは、「題名のない音楽館」の「『題なし』復活万歳! N響アワー立て直し万歳」に書いたことがある。
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