NHK芸術劇場 2010年11月19日(1)
2010年6月10日の、英国ロイヤル・バレエ団来日公演を放送。同バレエ団で永年プリンシパルとして活躍した吉田都の引退公演を兼ねたもので、解説の時間は吉田都をゲストに迎えて心境や今回の振り付けの特徴などを語っていた。
プロコフィエフが作曲したこのバレエ音楽は、私が常々彼の最高の傑作ではないかと考えているもので、これこそが、ソ連に帰国したあと彼が苦しめられた「社会主義リアリスムと自分の作風との葛藤」に対する彼流の「回答」なのだと思う。
吉田都の説明によると、同じこのバレエ団の中でも、大きく分けて2通りの振り付けが用いられているそうで、今回は、踊りを止めて演技に集中する部分のある方の振り付けを選択したとのことだった。
そう言えば、ロイヤル・バレエ団だったかどうか忘れたが、今回とは異なる振り付けによるバージョンを一度通して見たことがある。
今回吉田都が採用した振り付けも、音楽を邪魔しない適切なものだったと思う。踊りを見ながらプロコフィエフの音楽にいつしか酔いしれてゆく・・・。何という素晴しい音楽だろうか。
しかし、初演された当初は、当局から「無意味な音楽」として酷評され、一般大衆の人気を得るのにも少し時間がかかったらしい。
だからこそ彼自身によって「組曲」が2通りも作られることとなったわけである。
その結果、モトの曲で「騎士たちの踊り」となっている曲が、「モンタギュー家とキャビュレット家」という名前で知られるようになってしまった。そう、CMでも使われ有名になったあの曲である。
あの曲の、人を威嚇するような、重々しい響きのインパクトはもの凄いものであり、この1曲だけ聴いてもプロコフィエフの凄さが分かるというものである。
ただ、中々良い演奏で全曲に接する機会に恵まれない。
私はデュトア盤とチョン盤で聴いていて何れも名演だが、前者は「全曲からの抜粋」、後者は「3つの組曲からの抜粋」である。
今回の公演はどれだけ省略したのか、またはしなかったのか良く分からないのだが、第2幕から第3幕にかけての移行部で、突然余りにも良く知っている音楽が鳴り出したのには驚いた。
交響曲第1番「古典」の第3楽章「ガヴォット」である。
バレエ音楽というものは交響曲のように縛りのきついものではなく、関係ない曲を引用したりすることが時々あるが、それでも、これはないだろうと思った。
ところが、手元の解説書を読み直してみると、モトの曲が、この交響曲の第3楽章を流用するようになっているのだそうで、今回の演奏は、それをそのまま採用したに過ぎないということが分かった。
抜粋盤で聴いていたため、知らなかったわけだ。
(この稿続く)
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