芸術劇場 2010年11月19日(2)
(前稿から続く)
この「ロミオとジュリエット」で最高に盛り上がって見る者を酔わせもする場面の一つは、何と言ってもバルコニーのシーンである。
演出にもよるが、私はこのシーンを見るたびに、「ウェストサイド物語」における、マリアとトニーが「トゥナイト」を歌うシーンを思い出す。「ウェストサイド物語」のバルコニーのシーンと、二人の主人公の状況がそっくりなのだ。ダンスパーティーで初めて出逢ってお互いに一目惚れしてしまい、改めて愛を確かめ合うべくヒロインの元を訪れるというのがこの場面なのである。
ダンスパーティーで初めて出逢ってお互いに一目惚れしてしまうという設定もそっくりだ。一目惚れして近づこうとしている二人を仲間たちが引き裂くシーンもそっくり。
バーンスタインは、シェイクスピアの「ロミオとジュリエット」を当時のニューヨークに場面を置き換え、2つの家の代わりに若い不良グループ同士の抗争に置き換え、そこに差別問題もからませたミュージカルということで制作した。同じ原作に基づいているのだから似たようなシーンが出てくるのは当然かも知れないが、映画化されるにあたって、映画の制作者は、ひょっとするとバレエ音楽の演出を参考にしてはいないだろうか。
バーンスタインが、ウェストサイド物語の中で最も気に入っていたベスト曲は、「Somewhere」だった。しかし、作曲者の意図に反して、多くの人が「Tonight」をベスト曲とするに至った。「Tonight」がバルコニーのシーンで歌われていたこと、そのバルコニーのシーンが大きく心を打つ場面となったことが、その一助となったのではないだろうか。
改めて、機会があれば、バレエ「ロミオとジュリエット」を見たあとで、映画「ウェストサイド物語」を見てみて頂きたい。この両者がいかに似ているか分かるはずだ。
私は「ウェストサイド物語」を映画で知り、最も大切な曲であり映画となった。バレエ音楽「ロミオとジュリエット」を聴くようになったのは、まだ10年も経っていない。バレエそのものを、テレビでだが見たのはもっと後のことである。
そしてプロコフィエフの音楽の良さが分かるようになってバレエも分かることができると思えるようになった現在、「ウェストサイド物語」と似ていると思うと共に、同じ原作に基づいた作品として、この両者が歴史に残る双璧だと確信するに至っている。
尚、原作は、「ウェストサイドストーリー」を知って間もなく読んでみようとしたが、歯が立たなかった。戯曲なので、小説に比べて読みづらいのだ。
かつて布施明と結婚したことのあるオリビア・ハッセーがジュリエットを演じた映画がある。1968年に公開されたこの映画で、オリビア・ハッセーは当時15歳の新人。名画とされた。私は見る機会がなかったが、ニノ・ロータの音楽が良くできていたことは記憶している。
しかし、音楽としての価値は、バーンスタインやプロコフィエフと比べるべきレベルではない。
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