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2010年11月29日 (月)

こだわり人物伝 ショパン

NHK教育TVで放送されていた「こだわり人物伝 バーンスタイン ショパン」の、ショパンに関する放送分が11月24日で終了した。

この番組については、10月15日付の記事で、バーンスタインに関して弟子の佐渡裕が語るという内容であったことで絶賛させてもらっていた。バーンスタインに続いてショパンが予定されていたのだが、テキストを読む限り余り期待しないでおこう、という主旨のことも書いていた。

4回分終わった結果だが、予想通りと云うべきか、殆ど共感できなかったし新たな知見を得ることも少なかった。

基本的な流れは、ショパンの波乱の生涯を追って、その時々に作曲された曲を併せて紹介し、「そうした時期にこんな曲が書かれた」ということで、ショパンの聴き方を深めようということだった。

もちろん、どんな聴き方をしようと自由だし、作曲家の生涯を知ることによって、曲を聴くときの理解が深まることがあるのは事実だ。
しかし、この番組では余りにも、作曲家ショパンとその作品が密着しているが如き語り口であって、かえって作品の本質から逸脱して行くように思った。
換言すれば、時代背景とか生涯に関して知ることとと、作品の魅力とは、もっと距離があって然るべきだ。

膨大な資料を駆使してショパンの生涯を追い、小説として著わすに至った労力と執念には感服するしかないし、生涯最後となった「伝説」の公開コンサートのプログラムの曲目リストを再現して、見せて聴かせることを第4回で行ったのも良かった。

「伝説」となった理由は、上記の通り、結果的に生涯最後のコンサートとなったからである。
また、もう一つの理由として、「舟歌」で最も盛り上がる部分を再弱音で弾いて意表をついたことにあるそうだが、そこに余りにも深読みした意味付けをしていたのも賛同できない。

既に体力の限界を覚えていたショパンが、自分はもうこの部分を最強音で弾くことができないと考えて、逆の弾き方を咄嗟に試み、それが聴衆の意表を突くと共に、結果的に感動を与えた・・・と、私なら考える。

また、サンドとの別れの決定的な理由を、サンドの二人の子供に対するショパンの接し方に対してサンドが激怒したということに求めているのだが、そんなことがあるのだろうか。
サンドは息子を溺愛して娘に冷たくあたっていたのだが、その反発から娘はショパンに甘えるようになり、娘をもっと可愛いがるようショパンがサンドに口出ししたことが発端だというのだ。
これも私は賛同できない。もっと深い、お互いのすれ違いのようなものが二人を追い詰めて行ったと想像するのが普通ではないか。

また、番組中では触れなかったが、テキストの中で、「『舟歌』を聴いた後で、人は犯罪を犯そうと考えはしないだろう」という主旨のことを述べている。優美な曲によって心が洗われるという意味だろうか。
私は、こんな文面を見ると心底ウンザリし、ガッカリする。

たとえショパンであっても、心が洗われるとは限らない。ショパンにも、暗く激情的な面がある。「舟歌」だって、どうしようもない寂しさを帯びた部分があり、それは、場合によっては暗い情熱を蓄えて行くものであったりもする。
また、犯罪者が全て邪悪な心から犯罪を犯すとは限らないし、邪悪な心を持っているから犯罪者になるとも限らない。また、邪悪な心を持っている者がショパンを愛聴している場合だってあるだろう。

「『舟歌』を聴くと犯罪を犯さない」などという論は、人間論として、また作曲家論として、余りにも雑駁に過ぎるのだ。こんなアプローチをするのは音楽評論の分野で過去にも現在でも結構存在するが、これは聴く者を却って音楽から遠ざけてしまう「悪論」である。
私は、こうした論を最も嫌う。

ホームページ「題名のない音楽館」内の「評論に関する評論」に、少し古い記事だが類似の主旨を書いているので併せてご覧頂くと幸いです。

尚、番組内では触れなかったが、テキストには、ショパンがパリに出てから生計を立てることができるようになるまで、如何にパリの人脈を上手く活用していったか、ということが書かれている。

不満の多い番組だったが、テキストにはそうした、余り語られて来なかった内容も含まれている。

番組専用のテキストがいつまで入手可能なのか分らないが、バーンスタインと併載されている点だけでも買い得と云うべきだろう。

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