シューマン 交響曲第4番 もっと演奏されるべき
シューマンの作品は、未だによく分からないでいる。私は主に管弦楽作品とピアノ曲を聴いてきたので、他のジャンルについては元々どの作曲家についてもよく分からないのだが、それでも、シューマンの交響曲は今いちよく分からない。ピアノ協奏曲は間違いなく名曲だと思うが、好きかどうかはよく分からない。
交響曲はレコード時代にサヴァリッシュやカラヤンの盤を購入して何度かは聴いたのだが、もっと聴こうとは決して思わなかった。CD時代になってからバーンスタインが振ったものも然りである。
唯一の例外は、第4番だ。4曲しかない中の1曲だから若干おかしな表現だが、最近の演奏で「これ」というものに中々巡り会わないでいるためである。それは、知っている限り、コンサートのプログラムで取上げられることが少ないためでもある。
第3番はよく演奏されるし、N響の定期でも先日マリナーの指揮で演奏されて、ひょっとすると名曲かも知れないと思わせてくれる演奏だったが(N響第1681回定期に関する記事をご参照)、他の交響曲は余り取上げられた記憶がない。
もっと取上げられる機会が増えたら、もっと「これ」という演奏に出会うかも知れないが、その機会がないので、結局今の処は、フルトヴェングラー指揮ベルリン・フィルによる演奏にトドメを指す。このため「唯一の例外」と書いたわけである。
第3番「ライン」を聴き始めてから間もない頃、次に知った(聴いた)シューマンの交響曲が、このフルトヴェングラーによる第4番だった。ラジオから流れていて、途中の第3楽章からだったが、たちまちトリコになってしまった。その後上記のように何通りかの「全集」の中の曲として聴いたのだが、それでも「ライン」よりも先に良さが分かった。ただ、良さは分かったのだが、今一シックリこない処があった。
それからもっと経って、フルトヴェングラーの演奏をCDになってから手に入れて、やはりこれしかないと確信したのである。
この曲は第4番となっているが、作曲された順序は第1番と第2番のあとであり、改訂に時間を要して出版する順序が変ったため第4番と称するようになった。4つの楽章から成るが、全曲切れ目なく演奏される。
第1楽章はたった一つだけの主題を繰り返しグルグルウネウネと続けてゆく。
第2楽章は第1楽章の要素が出て来たあと、ヴァイオリン独奏もからむ新たな要素が出てくる。ここのヴァイオリン独奏は美しいが、美しいことに徹し切れないもどかしさがある。
第3楽章は、異様なインパクトのあるスケルツォ。ここを初めて耳にしたとき、私がトリコになった楽章。トリオらしき部分に、第2楽章の要素が来る。
第4楽章の始まりは、薄暗い雰囲気の中から次第に光りと力を増してゆき、輝きに満たされてゆく。ここはブルックナーみたいだ。しかし、輝きの頂点に立ったかと思うとすぐにグダグタウネウネが始まり、ゴチャゴチャと少し混乱したあと、もう一度力を増して輝きの中で終る。
上記にグダグタとかウネウネとか書き、「美しいが、美しさに徹し切れない」と書いた。中々他にうまい表現を思いつくことができないのでそう書いたのだが、私は、シューマンの本質はそこにあると思っているのである。さらに言うと、ある種の怪奇性も伴っている。シューマンの「毒」と言ってもよい。
ヴァーグナーやマーラーの「毒」は、陶酔させ我を忘れさせる「毒」である。ヴァーグナーは地獄の中に引っ張り込むような恐ろしい力に抗し切りなくなりそうな「毒」であるが、マーラーは異様な響きと美しいメロディーによる「毒」。
シューマンの「毒」は彼らとは全く異なるが、グダグタウネウネとしか私が表現できなかった、何かハッキリしないことを繰り返しながら進んでゆく、ということが、ある意味で魅力となっていて、一旦そこに囚われると、中々そこから這い上がれない・・・という意味での「毒」とでも言うべきか。
こう考えるので、マリナーによる「3番」は名演だったし「この曲は良い曲かも知れない」と再認識させてくれるものだったが、如何せん、全体が明るすぎるのだ。
(この稿続く)
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