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2010年11月 9日 (火)

名曲探偵アマデウス 2010年11月4日放送 ショパン「舟歌」

この番組は、内容は良いのだが放送日が変則的だし、高校野球や国会中継などがあると飛ぶことが多い。また、以前やった内容を何度か再放送しながらやっていて、再放送のときも再放送である旨の表示がなかったりするので面食らうことが多い。
この日の「舟歌」も、直前に見逃したときのものの再放送だと思うのだがよく分からない。

しかし、内容は良かった。ショパンの「舟歌」Op.60嬰へ長調の楽曲分析である。

ショパン晩年の作品で、しかもサンドとの別れが迫りつつあった時期に作曲されたことによって、ゴンドラに揺られているような心地よいメロディーがメインなのだが、微妙な翳りがある。また、最後にかけて長いクレッシェンドで盛り上がってゆく箇所は、聴いていてワクワクするだけでなく、小山実稚恵によると、弾いていても興奮させられる曲だと言う。番組内では「ショパンの最高傑作」と称していた。

この番組では、最後に、短めの曲であれば全曲を、また長い曲であれば「サワリ」の箇所を演奏するのだが、その前も、楽曲分析を進めながら断片的に曲を流してゆく。

で、この、分析しながら断片的に曲を流す間、そして、最後に、短めの曲だから全曲演奏された時、聴きながらずっと、「ああ、この曲、ずっと昔から大好きなんだ」と改めて思ったのである。

この曲に初めて接したのはクラシック音楽を聴き始めてすぐの頃で、ペルルミューテルの演奏によってである(本稿執筆時点では入手困難)。その後、記憶によるとルビンシュタインの演奏だったはずだが、それを入手した頃から好きになり、現在に至るまでずっと好き、というわけだ。

また、当時住んでいた実家にピアノが入ったときには、楽譜も買って鳴らしてみようとしたが・・・とんでもない譜面だった。

何しろ嬰へ長調というと、シャープが6つもつくのである。正規にピアノを練習した人でも難しいはずの曲に、正規に習ったことのない私が太刀打ちできるわけはない。
シャープが6つもつくと、まず読むことが困難である。かろうじて1つずつの音符は読めても、繋げて演奏できるように練習する気力が追いつかない。でも、レコード(CDがなかった頃である)で聴きながら譜面を追うだけでも、何となく、よりショパンの世界に近づけたような気になったものである。

そしてこの日の放送で、細かく楽曲分析しているのを聞くにつれ、なぜ自分が昔から好きなのか、僅かだが分かった気になれたし、最高傑作とする人も多い、ということで、以前から好きだった自分の感性も誉めたくなった。

この曲は、後半部からずっと盛り上がってゆくが、激しさを感じる部分はない。私は、激しい部分が含まれている曲こそショパンの神髄だと考えているが、そうした部分がなくても、最高傑作のひとつであると称することに異議はない。

現在、聴くときは上記のルビンシュタイン盤か、アルゲリッチ盤を聴いている。

ところで、作曲家の吉松隆が書いた「『運命』はなぜハ短調で扉を叩くのか」(ヤマハミュージックメディア。2010年9月初版)によると、ショパンやリストにシャープやフラットが沢山付いた曲が多いのは、人間の手の形が中指を中心に山形状になっているため、白鍵だけの曲よりも、黒鍵を多用する方が却って指を速く動かすことができ、テクニックを駆使しやすいためだとのことである。

そうした、演奏する上での便宜によってもシャープやフラットを多くしている場合がある、というのは余り聞いたことのない視点であって極めて面白かった。
しかし、本書の後半でシャープやフラットの数ごとに代表的な曲を1曲から2曲例示している部分で、シャープ6個の嬰へ長調と、フラット6個の変ト長調の何れも「クラシック音楽では代表例なし」となっていて、「あれ??」と思ったのである。

嬰へ長調ではショパンの「舟歌」があるではないか。

記憶が正しいことを確かめるために、手早く引ける「クラシック音楽作品名辞典」で調べたら、記憶は正しかった。付記すると、変ト長調では、同じくショパンの「黒鍵のエチュード」(12の練習曲作品10 第5)がそうだったはずと思ったが、同様に、記憶は正しかった。

上記のように、「舟歌」は、多くの人がショパンの最高傑作と称している曲である。これを除外して「クラシックでは該当曲なし」として私などに指摘されるのは、かなり恥ずかしいことではないだろうか。

もちろん、著者によって得手不得手があるから、吉松隆が、ショパンが余り得意ではないのかも知れない。しかし、著者がもし気がつかないとしても、編集者が気付いて修正すべきものである。出版社名を見るとヤマハの系列だと思うのだが、どうしたことか。
何よりも、本書の前半部で、ショパンやリストの曲にシャープやフラットのたくさん付く曲が多い理由を解き明かしているのである。「係り結び」の、「結び」のひとつを欠いたようなものである。

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