カルメンの愛した男は誰? 続々々
(前稿から続く)
さて、最初に「カルメン」の曲に接し、「ハバネラ」の演奏方法にからめて当時習っていたヴァイオリンの先生から「ここは女の人が男の人をからかって・・・」という発言に、もやっとしたドキドキ感を覚え、その後「カルメンって何ちゅうひどい女だ!」と思うようになったのだが、さらに私が長ずるに伴って、少し見方が変っていった。
「ホセというのは何ちゅうだらしない、決断力のない男だろう!」という見方である。
世の中には、確かに、カルメンのような女性がいる、ということを知ってしまったためでもある。そして、自分も、決して幸せになれないことがホンネでは分かっているのに、どうしようもなく振り回され、深みに落ちてゆくことを感じた女性がいて、やがてそこから抜けることができた、という経験をしたためでもあるだろう。
この、「ホセって何ちゅうだらしない、決断力のない男だろう」という感じは、その後も、「世の中の男と女というのは、どうしようもなく、こうした関係または運命にもてあそばれる場合があり得るのだなあ」という気分が付け加わったりしながらも、つい最近までつながってゆく。
そして、「ホセという男の決断力のなさ、未練たらしいことに、カルメンも嫌気をさして、それを理解できないホセとの間に溝がどんどん深くなって殺人につながった」というように観るようになった。
だって、もはや愛してもくれない女性に、モトに戻ってくれ、オレともう一度やり直してくれ、と言ったって所詮どうしようもないじゃないですか。カルメンだって、ホセとの間に心の溝を感じ始め、自分と一緒にいてもこの男とともに不幸になるだけだと感じ始めたからこそ、激しく言い寄ってくるエスカミーリオに心を奪われてゆく。それに嫉妬心を燃やすホセが、いつまでもウジウジと自分にまとわりついて来るのは、ますます鬱陶しく、かえってますます心が離れてゆくこととなる。
だって、婚約者ミカエラが、盗賊団の居場所を探しあてて、ホセの母親が危篤であると知らせにきて、それが後に闘牛場の前で再会するまでの別れとなるのだが、去ってゆく間際まで、未練たらしく怒りと嫉妬の言葉を投げつけてゆくのである。カルメンとしては、ほとほと愛想も尽きるというものだ。。。。
・・・と、こんな風にこの作品を認識していた。
それが、佐渡裕による公演を観て、大きく変ったのである。
(この稿さらに続く)
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