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2009年10月26日 (月)

カルメンの愛した男は誰? さらに続き

(前稿から続く)

佐渡裕プロデュースによる「カルメン」

2009年6月25日~30日、7月1日、3日~5日が兵庫公演。会場は兵庫県立芸術文化センターKOBELCO大ホール。オケは会場付属の兵庫芸術文化センター管弦楽団。カルメン役のメゾ・ソプラノはステラ・グリゴリアン(Aキャスト)と林美智子(Bキャスト)のダブルキャスト。兵庫県立芸術文化センターにおける西宮公演のあと、東京での公演、そして名古屋公演と続き、全15公演という大がかりなものだった。

この内、6月30日の兵庫公演を観に行った。Aキャストの方である。別に「外人崇拝」という気持ちはないが、価格も同じだったので、どうせなら、ということで。

観にゆくことを決めたのは、大きな動機もあった。佐渡さんがヤマハから出ているPR誌で、「カルメンは、ホセという1人の男の人生を狂わせてしまうほど美しい女性でなければならない」と発言していて、そこに添えられたカルメン役の2人が、何れも確かに絶世の美女だったからだ。

「カルメン」に限らず、オペラ自体、ナマで視聴したのは初めてである。オペラグラスをどうしようかと思っているうちに当日となってしまい、幸い会場で安価で手に入れることができたので持って入ったのだが・・・オペラグラスで観ても殆ど顔は分からない! だから、カルメン役のステラ・グリゴリアンが、写真に違わず「絶世の美女」だったのかどうかは、当日は分からなかった。オペラグラスと称して販売されているのは大体3倍程度のもので、会場で入手したのも3倍。A席だったのだが、人物の全身像がやっと判別できる程度。もちろん、顔もよく分からないし、表情を伺い知ることもできない。この辺はテレビと違う処だ。

けど、負け惜しみになるが、それも良かったかもしれない。

キッチリと表情などを観るのが無理と分かった以上、舞台の全体の感じと、音楽の流れをちゃんと聴こうと割り切った。オペラグラスも殆ど使わず、ボーッと見聴きして行った。それによって、(ここでは逐一触れることはしないが)新しい「発見」もあった。

そして、最後の場面になったときに、「あ、ひょっとすると『カルメン』を誤解していたかも知れない」と思い至ったのである。

ここまで、前置きに等しいゴタクが長くなってしまったが、タイトルの「カルメンの愛した男は誰?」という点である。

私がこの公演で「あっ」と思ったのは、「カルメンはホセに愛想をつかしていたかに見えるが、実は、ずっと、一番愛していたのではないだろうか」ということだ。だって、友人たちから「殺されるかも知れないから逃げなさい」と忠告されているにも拘わらず逃げもせず、ホセと向き合い、罵詈雑言を浴びせつつも、そして殺すとまで言われているのに、大声で助けを呼ぶこともせず、結局はホセの手にかかり、ホセの腕の中で死ぬのだ。

とっくに、話し合って和解できる状況ではなくなっている。そんな相手ではないことも知っている。殺されるかも知れないことは、かつてトランプ占いをしたときにハッキリ予言されていて知っている。すぐ逃げるのは難しいとしても、少なくとも闘牛場に逃げ込んでしまえば当面は身を隠せるし、試合が終わったあと、新しい愛人のエスカミーリオに身を託して守ってもらうことだってできる。

しかし、カルメンは、ホセに殺されることを選んだ。

これって、謎だと思っていたし、なぜなのか、と公演の最中にも思い続けていた。で、「あっ。カルメンは最も愛した男だから殺されることを選んだのだ」と得心するに至ったのである。

オペラだから、演奏によっても演出によってもキャストによっても感じ方が変るだろう。今回の演出は比較的オーソドックスなものと観たし、キャストも、多分絶世の美女だったのだろう。・・・と言うより、後日同じキャストで「題名のない音楽会」に出演し「カルメン」の超抜粋版をやったのだが、確かに美人だった。

けど、美人であるのに越したことはないが、必ずしもそうでなくても、男と女の間には、どうしようもなく深みに陥ってしまう不幸な関係というのが成立してしまうことがあるのだ。決して幸福になることはない、とお互いに分かっていても、である。

「カルメン」は、そんなことを色々と考えさせられることもあり、また、この上なく親しみやすい音楽も相俟って、名作として演奏され続けているのだろう。

そして、私が今に至って新しい「発見」をしたように、多くの愛好家が、それぞれのカルメン像、それぞれのホセ像を思い描き、また感じ方・見かたを変えながら作品に向き合い続けているのだろう。

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