鉄道歴史読本
(梅原淳著。朝日文庫。2009年3月30日第1刷。ISBN 978-4-02-261604-3 お勧め度☆☆☆☆)
東海道新幹線の建設について、建設の機運を盛り上げてゆくことを狙って、当時の十河国鉄総裁が鉄道技研と組んで仕掛けた講演会があった。講演会で世論を見方につけた国鉄は、社内の主流意見も新幹線建設に向けて一本化を進め、幾多の苦難はあったが1964年の東京五輪までに間に合うよう開通させることに成功する。
こうした話に始まり、連結器の自動化、関門トンネルの工事、交流電化の工事、常磐線綾瀬駅付近の線増工事、札幌市営地下鉄のゴムタイヤ軌条の実用化など、意外と知られていない多彩なエピソードが、当時の記事や工事図面なども引用しながら紹介されてゆく。
東海道新幹線の工事に関してはこれまでも色々と語られてきたし、とくに十河総裁が技師長に任命した島さん父子の物語などはよく知られている処だ。しかし本書はそうした類書とは異なる、データ中心の、ある意味ではドライな語り口で進められてゆく。
鉄道評論または鉄道エッセイというジャンルがあるとすれば、それは「時刻表2万キロ」の故・宮脇俊三の一連の著作物により確立したと考えている。しかし、結構高い水準で確立したためもあってか、なかなか宮脇作品を超える水準のものには出会わない。強いて言えば、仮想新線や仮想ダイヤに重点が行きがちな川島令三の一連の著作だろうか。宮脇俊三の新作が出てくる可能性がなくなってから、私がもっぱら読むのは川島作品とならざるを得なかった。
梅原淳という人の著書はこれまで意識して読んだことはなかったが、「こういう語り方による鉄道評論もあり得るなあ」と感じさせてくれた。カバーなどをよく見ると、これまで私が読んだ何冊かの本の監修も手がけているようで、まったく初めて読む人というわけではなかった。鉄道に関わる本について、今後はこの人の作品にも注目してゆきたい。
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