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2015年5月

2015年5月22日 (金)

明治維新という過ち 改訂増備版

(副題「日本を滅ぼした吉田松陰とテロリスト。原田伊織著。毎日ワンズ。2015年3月10日第4刷。お薦め度1)

売れているようだ。私は毎日新聞を購読しているのだが、関連会社の出している本ということもあってか、よく本書の広告を目にしていた。時が経つごとに累計何万部出版という数字が上がっていったし、現に、本年1月に初版を出してから2ヵ月ほどで上記の通り第4刷に到達している。

薩長が明治政府を樹立し、その後の歴史が薩長にとって都合のよい歴史に書き換えられた・・・というのは、実はよく論じられる処だ。その上に立って、どこがどう変わったのかなどを論じて行くのが歴史家なり、歴史をテーマに小説や評伝を書く人の腕の見せ所というものだと考えている。

私も、率直に言って「明治維新」というものは薩摩藩の、とくに西郷ー大久保ラインによる陰謀だと思うようになってきている。
そうした、「明治維新見直し論」の1つかと思って本書を手許に置いたのである。

しかし、読み始めてすぐに失望した。本書はそんな上等なものではない。
結果、途中で読むのを放棄せざるを得なかった。これはひどい。
極めて偏った見方に基づいた、独善的で雑駁(ざっぱく)極まりない本である。何の価値もないと断言していい。

例えば、副題にある吉田松陰である。
全く大した思想を持った輩ではなく単なる先導者・テロリストだと断じているが、それでは後の「明治維新」の立役者の多くが彼を慕い、彼の元に集まったのはなぜなのか。
そこには、人が人を惹きつける力、即ち「」人物」という視点が欠けている。

そして、副題にあり本書内でも執拗に採りあげている「テロリスト」という決めつけ。
これは、あの時代と現在の価値観を混同(多分、意図的に)して論じるのが如何に無意味であるかということが分かっていない。

「明治維新」賛美に手を貸したのが司馬遼太郎であるとして彼を断罪し、戦前の陸軍の拡張主義が松蔭の影響によるものだとし、「維新」と称して廃仏毀釈に走り多くの寺院を破壊し、そうした影響が現在まで続いている。徳川家を温存して、当時のドイツ的な国とすべきだった、と論ずる。
ハッキリ言ってバカですよ。

彼は、本書内で、70年安保のとき、右側から関わったことを書いている
これで、ああそうかと納得したのは、立花隆が本書を絶賛した書評を書いていることである。立花隆は60年代安保闘争をくぐってきた人だし、著者は右側からとは言え、70年代安保に関わっている。
こうした人に共通するのは、妙な処に論点を無理矢理作り出し、理屈にもならない理屈をこね回すということである。こね回すことに恐らく快感を覚え、「理解しにくい」といった顔を見せると突然に聞き手をバカにし始めるのだ。

実に幼稚な論によって展開される本書。本来だとお薦め度はつけないレベルのものである。まあ1点だけ付けたのは、「明治維新」について無批判に受容してきた人に、「こうした考え方もある」ことを知って頂くにはこうした本もあってもいいか、ということによる。

しかし、多くの歴史学者、多くの司馬遼太郎ファン、多くの評伝作家を相手に喧嘩を売るようなこの本、よく出せたなあ、とある意味感心したのは確かだ。

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