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2010年11月26日 (金)

五珠のそろばん(4)

(前稿から続く)

さて、ここで算盤の話に戻る。

現在使われている算盤は、1列に「1」の珠が4個、「5」の珠が1個配置されている。1の珠が4個なので、これを仮に(正式な名称があるのかも知れないが)「四珠の算盤」と称しておく。これは、「9」までが1列になって「10」からは隣の列を加えて計算するので、十進法に基づく計算と表記を前提としているわけだ。

ところが、半世紀近く前、私が学校で算盤の時間でネを上げていた頃、学校で買わされたのは「四珠の算盤」だったが、各家庭で持っていたのは「五珠の算盤」であった。当時、電卓などは当然なく、家計簿をつけたりする奥様方の必需品として「五珠の算盤」があった。母も持っていた。「五珠の算盤」とは、1列に、「1」の珠が5個配置されている算盤である。「5」の珠は1個で、これは「四珠の算盤」と同じである。だから1列で10まで置くことができるが、十進法で答えを書く方式だと、「1」の珠が1個余ることとなる。

当時からつい最近まで、何でこんな不合理な珠数なのだろうと不思議に思っていた。母の持っていたものなどは、戦前の、モノのない時代のものだったはずだ。珠1個とはいえ、不要な珠を減らすだけでも随分違ったはずだ・・・など。

現在でも一部で「五珠の算盤」は使われているようで、その使い方について書いてあるページもあるようだ。「四珠の算盤」とは異なった使い方があり、それが分かると使いやすいと思う向きもあるらしい。

しかし、「四珠の算盤」で済むことをなぜわざわざ「五珠の算盤」を使う必要があるのか、全く分からないという点では、昔私が疑問に思っていた頃と何も変らない。当時、母たちに尋ねても、明確な答えはしてくれなかった。

ところが、最近気がついたのである。
漢数字における表記が本来は「十進法」でなく、「十一進法」なのだという事実。だとすると、「五珠の算盤」は、「十一進法」の表記に適した置き方ができる。できる、という以上に、むしろこの方が自然な置き方なのではないか。

最初に書いたように、私は当時父が言った「そのうちコンピュータが普及して誰でも使えるようになるのだから、算盤なんて要らなくなる」というのを鵜呑みにして、算盤をマジメに覚えようとしなかった。だから、この「五珠の算盤」で、加減乗除の計算をするときに、如何なる不都合があったのか、またはなかったのか、知る由はない。少なくとも「十一進法」による珠の配置ということについては間違いないと思う。

現実に「電卓」というものが普及してゆき、その普及の始まった頃に、まさにその「電卓」を作る会社に入ったわけで、入社するまで、算盤をちゃんと勉強しなかったことについて後悔したことは一度もなかった。

しかし、入社したあと、「電卓」など叩かずに、かなりの桁数の計算を暗算でやってのける先輩方が何人かおられ、そのときばかりはその能力をうらやましく思ったし、僅かだが、算盤をもう少しやっておくのだったという後悔を覚えたものである。

現在でも学校で算盤の時間などはあるのだろうか。なかったとしても、算盤塾とという存在の人気は根強いようだし、時折テレビなどで「暗算大会」の実況などが放送されると、算盤をベースにした暗算能力というものに舌を巻くことが多い。

電卓はおろか、複雑な計算もExcelなどで一発でできる時代だが、算盤というものは、別の能力を開拓するもののようだ。およそ、何らかのものを習ったり練習したりして無駄になることは殆どない。私など今さら算盤の練習などする気はないが、勉強しておくと必ず役に立つことがあるはずである。

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